びまん性軸索損傷 / 脳の障害 の基礎知識

びまん性軸索損傷

びまん性軸索損傷脳の障害

びまん性軸索損傷とは

「びまん性」とは、広い範囲に広がっている状態のことをいいます。「軸索」とは、神経線維のことであり、別の神経細胞へ情報を伝達する役割を有しています。「びまん性軸索損傷」とは、頭部に強い衝撃を受けたことで、脳の広い範囲で軸索の損傷が生じる脳外傷です。

他方で、脳の一部に生じる損傷(局所性脳損傷)には、「脳挫傷」、「頭蓋内血腫」、「硬膜外血腫」などがあります。

びまん性軸索損傷の症状

(1)受傷直後から6時間以上の意識消失がある。

事故直後から6時間以上の意識消失がある場合、画像上では脳挫傷等の局所性脳損傷が確認できず一見正常とみえる場合でも、びまん性軸索損傷の可能性があります。

(2)画像所見

びまん性軸索損傷の場合、受傷直後の画像では一見正常に見えることもあります。
ただし、脳内に点状出血を生じている場合があり、脳内出血やくも膜下出血を伴う場合もあります。
画像のうち、CTは、X線で骨などの硬部組織を見るのに適していますが、脳などの軟部組織の確認に適しているとはいえません。
MRIは、被験者にラジオ波を加えることで人体組織を構成する原子イオンから発せられる共鳴エネルギーを画像化するもので、水分の多い軟部組織の確認に適しています。
このため、びまん性軸索損傷の確認、すなわち脳内の点状出血の確認には、CTよりMRIのほうが適しているといえます。

びまん性軸索損傷の場合、時間の経過とともに脳室拡大や脳萎縮が生じるとされています。
このため、事故直後だけでなく、定期的に、脳室拡大や脳萎縮が生じていないかどうか画像で確認する必要があります。
なお、びまん性軸索損傷による脳室拡大や脳萎縮は、およそ3ヶ月程度では固定し、以後あまり変化しないといわれています。

<びまん性軸索損傷の画像所見の特徴>

  • ・事故直後のMRI画像で、脳内(皮質下白質、脳梁、基底核部、脳幹など)に点状出血などの所見が認められる。
  • ・事故から3ヶ月後までのCT画像、MRI画像で、脳室の拡大所見が認められる。

(3)認知障害(記憶障害、集中力低下、遂行機能障害、注意力低下など)と人格変化(感情易変、攻撃性、暴言・暴力、被害妄想など)といった症状が見受けられる。

びまん性軸索損傷の後遺障害等級

事故から1年程度経過してもなお、認知障害や人格変化の症状が残存する場合、「神経系統の機能又は精神の障害」として、自賠責保険の後遺障害等級第1級から第9級に該当する可能性があります。

自賠責保険は、原則として労災保険の認定基準を準用しています。
労災保険では、「神経系統の機能又は精神の障害」として、(1)意思疎通能力、(2)問題解決能力、(3)持続力・持久力、(4)社会行動能力の4つの能力によって、後遺障害等級を分類しています。

また、常時または随時介護が必要な場合は、自賠法施行令別表第1の後遺障害等級1級(常に介護を要するもの)または第2級(随時介護を要するもの)に認定される可能性があります。

当事務所のびまん性軸索損傷の解決事例

被害者は、バイクを運転中に自動車に衝突され、びまん性軸索損傷等の傷害を負い、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」として自賠責後遺障害第3級3号と認定され、半盲や視野障害と併せて併合第1級に認定されました。
訴訟を提起し、判決を受け、既払金を除いて、約2億1600万円が支払われました。

解決事例の詳細はこちら

105 3級高次脳機能障害等併合1級が認定された男性について、約2億1600万円が支払われた事案

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