1.高次脳機能障害(脳の機能と高次脳機能障害の概要)
頭部外傷による高次脳機能障害とは
交通事故により脳挫傷など、頭部に衝撃を受けた被害者は、高次脳機能障害を負っている可能性があります。
事故後、頭部に衝撃を受け、次のような症状が現れた場合、高次脳機能障害の疑いがあります。
脳の後遺障害に関する賠償請求は、特に専門知識と経験が必要とされる 分野です。
幣事務所は、高次脳機能障害の分野に詳しい医師や行政書士に協力を仰ぎ、等級認定前からのお手伝いを行っております。
高次脳機能障害が疑われる 被害者のご家族の方は、ご遠慮なくご相談ください。
〇記憶障害
事故の前に経験したことが思い出せない、新しい経験や情報を覚えられなくなった状態です。
「新しいことを覚えられない」
「少し前のことを忘れる」
「何度も同じことを話したり、質問する」
「約束を守れない」
〇注意障害
重要なものに意識を集中させたりすることが、できなくなった状態です。
「気が散りやすい」
「長時間ひとつのことに集中できない」
「ぼんやりしていて作業ミスが多い」
「同時に二つ以上のことに気配りできない」
〇遂行機能障害
論理的に考え、計画し、問題を解決し、推察し、行動するといったことができない状態です
「一つ一つ指示されないとできない」
「間違いを修正して行動できない」
「いつまでも決断できず」
「段取りが悪くなる」
〇社会的行動障害
感情や行動に障害が残ることによって対人関係がうまくいかず、社会に適応できない状態です。
行動障害
「周囲の状況にあわせた適切な行動ができない」
「職場や社会のルールを守れない」
「話が回りくどく要点を相手に伝えることができない」
「行動を抑制できない」
人格変化
「不機嫌・攻撃的な言動態度が増え暴言・暴力をふるう」
「ひきこもる」
「やるきがない(自発性の低下)」
「病的な嫉妬」
「こだわりが強い」
「被害妄想」
「依存する」
病識欠落
「障害がないかのような振る舞いをする」
「困っていることは何もないと言う」
「必要なリハビリや治療などを拒否する」
〇失語
「自分の話したいことが上手く言葉にできなかったり、滑らかに話せない」
「文字を読んだり、書いたりすることができない」
「言葉は流暢だが、言い間違いが多い」
「意味不明な内容を話す」
〇失認
「触っているものがわからない」
「人の顔が判別できない」
〇失行
(麻痺などの運動障害がなく、言われたことも理解しているにもかかわらず、日常生活で普段行っている動作がうまくできなくなる)
「道具が上手く使えない」
「日常の動作がぎこちなくなる」
脳の機能について(一次機能と高次脳機能)
脳の機能は、一次機能と高次脳機能に分かれます。
一次機能とは:
目で感じた光を脳に伝えたり、耳で感じた音を脳に伝えたりする「知覚機能」や情報を識別してそれに応じた運動を命じる機能(手足口などを動かす機能)「運動機能」のことです。
高次脳機能とは:
一次機能を連合することにより、それまで経験した知識・記憶や言語と関連づけて理解したりする「認知」、言葉で説明したり「言語」、新たに記憶する「記憶」、目的をもって行動にうつし「行動・遂行」、社会的な行動ができる「情動・人格」などの能力です。
交通事故の賠償分野で問題となる「脳外傷による高次脳機能障害」
交通事故の賠償分野では、
「脳外傷による高次脳機能障害」
(脳の器質的損傷を原因とする高次脳機能障害)
のみが高次脳機能障害とされています。
脳外傷によらない脳の障害(精神疾患などに基づく脳の障害など)は、高次脳機能障害ではなく非器質的な精神障害に分類されます。
自賠責保険の後遺障害等級認定上、脳の障害は、器質的損傷によるものと非器質的なものとに分類されています。
器質的な精神障害は、1級まで認められますが、非器質的な精神障害は原則として9級までしか認められません。
<脳の障害に関する自賠責保険の等級認定>
〇 器質的損傷 → 1級、2級、3級、5級、7級、9級
〇 非器質的精神障害 → 9級、12級、14級
脳外傷とは:直接又は間接的に頭部に外力が作用して頭蓋内外の組織に器質的ないし機能的損傷を生じるものの総称のことです。
器質的な精神障害とは:脳組織に異常が発生している状態です。
非器質的な精神障害とは:脳組織に器質的異常が確認できないけれど、異常な精神状態が発生していることをいいます。診断名としては、外傷後ストレス障害、脳震盪後遺症候群、PTSD、心的外傷後ストレス、パニック障害といった名称がつけられることが多いです。
次に「2.脳の損傷による障害について後遺障害等級認定の概要」について説明します。
基礎知識 関連記事
脳の障害 基礎知識一覧
-
びまん性軸索損傷脳の障害
びまん性軸索損傷
-
脳の障害症状固定
1.高次脳機能障害(脳の機能と高次脳機能障害の概要)
-
脳の障害症状固定
2.高次脳機能障害について後遺障害等級認定の概要
-
脳の障害症状固定
3.高次脳機能障害の等級認定に必要となる資料と検査
症状固定 基礎知識一覧
-
事前認定と被害者請求症状固定
交通事故における後遺障害とは
-
保険診療と自由診療症状固定
後遺障害認定の手続
-
事前認定と被害者請求症状固定
交通事故後遺障害等級における事前認定と被害者請求
-
後遺障害等級について症状固定
後遺障害等級はなぜ重要か?
-
症状固定自賠責と任意保険の関係
自賠責保険と任意保険の関係
解決事例 関連記事
脳の障害 事例一覧
-
1級 びまん性軸索損傷外傷性くも膜下出血眼(視力、調整・運動機能、視野)の障害脳挫傷頭部外傷高次脳機能障害
105 3級高次脳機能障害等併合1級が認定された男性について、約2億1600万円が支払われた事案
-
後遺障害別等級1級~3級 外傷性硬膜下血腫脳の障害脳挫傷頭部外傷
103 第1級1号が認定された男性会社員について、約1億8300万円が支払われた事案
-
6級 上肢(肩、腕、肘、手首、手指)の障害下肢(股、膝、足首、足指)の障害脳の障害高次脳機能障害
89 自賠責保険が頭部外傷後の高次脳機能障害を否定したものの、訴訟手続により第7級4号に該当する高次脳機能障害が認められ、最終受領額8500万円で解決