自転車同士の事故・自転車と歩行者の事故
自転車同士の事故・自転車と歩行者の事故
自転車で暴走する人や、雨の日に傘を差しながら自転車で走る人を見かけ、子供や老人にぶつかったら大けがするのではないか、とハラハラしたことはありませんか。当事務所でも、自転車による事故の被害者からご相談を受けることが珍しくありません。事故の相手方が自転車搭乗者の場合(自転車同士、自転車と歩行者の事故)、被害者はどのような形で賠償を受けることができるのでしょうか。
1.賠償される項目と賠償される可能性
加害者が自転車搭乗者の事故であっても、 治療費、会社を休業した場合の休業損害、入通院慰謝料、後遺症慰謝料など、 自動車事故と同様の賠償を請求することができます。
自動車事故の場合、請求できる損害項目についてはこちらをご参照ください。
自動車事故の場合(自動車vs自動車、自動車vs歩行者、自転車など)、これらの賠償項目は加害者が加入する任意保険や強制保険である自賠責保険で賠償されます。
しかし、自転車には自賠責保険のような強制保険への加入義務がありません。
そのため、自転車事故の場合、加害者に対して賠償請求すること自体は可能であっても、加害者に賠償する収入や財産がなければ回収が困難となってしまいます。
2.警察への届け出
自転車事故の加害者は、道路交通法により警察への届け出義務があります。
加害者が報告を拒む場合は、被害者が届け出をしましょう。
特に人身事故の場合には警察の届け出をし、実況見分を行ってもらいましょう。その場で警察を呼ばなかった場合であっても、病院で診断書をもらい、速やかに警察に届け出ましょう。
この実況見分調書が、後日、過失割合などを立証するうえで重要な証拠となります。
3.自転車搭乗者が加害者の裁判例
自転車搭乗者が加害者の裁判例です。被害者が死亡や重篤な障害を負った場合、高額な判決が出ています。中高生が加害者の場合であっても、賠償責任は認められています。
判決日 |
加害者 |
被害者 |
事故状況 |
障害の程度 |
賠償額 |
H8.6.5 東京地裁 |
男子 |
24歳 |
自転車同士。 男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員と衝突。 |
言語機能 の喪失等 |
9266万円 |
H3.9.30 東京地裁 |
男性 |
38歳 |
自転車と歩行者。 ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性と衝突。 |
脳挫傷等で3日後に死亡 |
6779万円 |
H7.4.11 東京地裁 |
男性 |
55歳 |
自転車と歩行者。 男性が昼間、信号表示を無視して高速度で交差点に進入、青信号で横断歩道を横断中の女性と衝突。 |
頭蓋内損傷等で11日後に死亡 |
5438万円 |
H2.2.15 さいたま地裁 |
男子 |
60歳 |
自転車と歩行者。 男子高校生が朝、自転車で歩道から交差点に無理に進入し、女性の保険勧誘員(60歳)が運転する自転車と衝突。 |
頭蓋骨骨折を負い9日後に死亡 |
3138万円 |
4.加害者が自転車搭乗者の交通事故をカバーする保険
※限度額や保障内容については、各保険により異なりますので、約款や保険証券をご確認ください。
個人賠償責任保険 |
一般的に、クレジットカード、自動車保険、住宅保険などの特約として付帯されています。 |
TSマーク付帯保険 |
自転車安全整備士による点検、整備を受けた安全な普通自転車であることを示すTSマークに付帯した保険です。搭乗中は自転車の所有者に限らず、自転車を借りた家族や友人、自転車を譲り受けた人も対象となります。青マーク、赤マークにより保障内容が異なります。 |
自転車保険 |
加害者側の個人賠償保険と被害者側の傷害保険を組み合わせた商品です。 |
傷害保険 |
被害者側の保険で、治療費や慰謝料などをカバーします。
|
人身傷害補償特約 |
多くの保険では、加害者が自転車搭乗者、被害者が歩行者の事故は対象外とされていますが、三井住友海上保険の人身傷害保険で交通乗用具事故特約を付与した場合、自転車による事故も保障されます(※2014年6月現在) |
<TSマーク付帯保険>
マークの種類 |
傷害保険 |
賠償保険 |
第一種TSマーク |
入院加療15日以上:一律1万円 |
死亡または重度障害(1~7級): |
第二種TSマーク |
入院加療15日以上:一律10万円 |
死亡または重度障害(1~7級): |
5.自転車事故の後遺障害等級について
自動車事故の場合、自賠責調査事務所による後遺障害認定手続が整備されています。
しかし、加害者が自転車の事故の場合、後遺障害等級認定制度がありません。
労災保険が適用される場合、労災の後遺障害認定を受けることができますので、労災の後遺障害等級を準用して加害者に対して賠償請求することが可能です。
労災保険が適用できない場合は、後遺障害の程度について、自ら裁判などで主張立証していく必要があります。
6.当事務所で取り扱ったケース
幣事務所で取り扱った自転車搭乗者が加害者のケースをひとつご紹介いたします。
【事故状況】
被害者の方が店舗の軒先で雨宿り中、右から走ってきた自転車に衝突された事案です。
【後遺障害の内容】
頸椎捻挫、腰椎捻挫、外傷性頸部症候群、左肩腱板損傷、顔面神経麻痺など
【受任から解決まで】
事故時、被害者は勤務中だったので、労災保険が適用されました。労災では障害等級準用12級が認定されました。
賠償交渉では、後遺障害等級12級をベースに加害者に賠償請求し、約1070万円(うち約410万円は労災保険給付により補填)にて示談しました。
加害者も勤務中でしたので、賠償金は会社が加入している賠償保険により支払われました。
7.弁護士に相談を
自転車事故は、民法が適用されるため、被害者側で加害者の過失を主張立証する必要があります(自動車事故の場合は、加害者側が「自分に過失がないこと」を立証します)。
また、自動車事故のように、整備された後遺障害等級認定手続きがないため、被害者の方は後遺障害の程度を示す証拠書類を揃え、出張立証することになります。
さらに、自動車保険のように加害者が任意保険に加入していることが少ないため、賠償額が認められても回収に困難が伴うことが考えられます。
当事務所では、自転車同士の事故や自転車vs歩行者の事故を取扱った実績がございます。まずはご相談ください(相談料は無料です)。
適正な賠償額や今後の見通しについて、専門の弁護士がご説明させていただきます。
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