びまん性軸索損傷 / 外傷性くも膜下出血 / 眼(視力、調整・運動機能、視野)の障害 / 脳挫傷 / 頭部外傷 / 高次脳機能障害 の解決事例

105 3級高次脳機能障害等併合1級が認定された男性について、約2億1600万円が支払われた事案

びまん性軸索損傷外傷性くも膜下出血眼(視力、調整・運動機能、視野)の障害脳挫傷頭部外傷高次脳機能障害

後遺障害等級併合1級 :びまん性軸索損傷 / 外傷性くも膜下出血 / 眼(視力、調整・運動機能、視野)の障害 / 脳挫傷 / 頭部外傷 / 高次脳機能障害 、

  2億1,600
万円
保険会社提示額 - 万円
増加額 - 万円

交通事故状況

被害者は、バイクを運転して、信号機の設置されている交差点を直進進行していたところ、対向方向から交差点を右折進行してきた四輪車に衝突され、脳挫傷、びまん性軸索損傷及び外傷性くも膜下出血等の傷害を負いました。

ご要望

被害者のご両親は、適切な後遺障害等級が認定されること、妥当な賠償金額を受領することをご希望されていました。

受任から解決まで

被害者は、事前認定により、併合第2級(①頭部外傷(第3級3号)、②同名半盲(第9級3号))と認定されていました。

当事務所では、被害者の後遺障害の内容等を検討した結果、眼球の障害が適切に認定されていないと判断し、異議申立てを行いました。

異議申立ての結果、被害者は、眼球の障害について、②同名半盲のほか、③複視障害(第10級2号)、④外傷性散瞳(第14級相当)が認定されたことから、頭部外傷と併せて、併合第1級が認定されました。

今回のケースでは、訴訟を提起し、判決が下された結果、既払金を除いて、約2億1600万円が支払われました。

解決のポイント

被害者は、軽度精神発達遅滞を理由として、既存障害として第9級10号と認定されていましたが、裁判所は、既存障害が存在する場合の労働能力喪失率及び後遺症慰謝料を算定するに当たり、後述する通り、画期的な判断を示しました。

 

労働能力喪失率

既存障害が認められる場合、労働能力喪失率を算定するに当たっては、これまで、現存障害の後遺障害等級に相当する労働能力喪失率から既存障害の後遺障害等級に相当する労働能力喪失率を差し引いて算定する例が多く見られたように思います。

この方法を前提とすると、今回のケースでは、現存障害の後遺障害等級が併合第1級であり、労働能力喪失率は100%であるところ、既存障害の後遺障害等級が第9級10号であり、労働能力喪失率は35%であることから、単純計算すると、労働能力喪失率は65%(100%-35%)と算定されるようにも思われます。

しかし、今回のケースでは、被害者は、本件事故前において、企業に勤め、同種の業務で働く同世代の方の収入と同程度の収入を得ていたことから、このような場合まで、既存障害を考慮して労働能力喪失率を算定することには疑問がありました。

そこで、当事務所は、自賠責保険では既存障害として第9級10号と認定されているものの、被害者が本件事故前は既存障害の影響を受けることなく就労することが可能であったことから、労働能力喪失率を算定するに当たり、既存障害を考慮すべきではない旨を主張しました。

裁判所は、当方の主張に対して、被害者の本件事故前の状態を踏まえ、「上記認定のような原告の状態からすると、本件事故以前における精神発達遅滞が、35パーセントもの労働能力喪失が想定される後遺障害等級第9級に該当するような程度のものとは直ちに認められない」等とし、「既存の軽度精神発達遅滞による逸失利益を、後遺障害等級第9級の後遺障害で想定される労働能力喪失率35パーセントの約半分である17パーセントとして算出し、これを本件事故後の後遺障害による逸失利益の金額から控除するのが相当である」と判示し、第9級相当の35%の減額を否定しました。

裁判所の判断は、既存障害の後遺障害等級から機械的に労働能力喪失率を差し引くことなく、被害者の事故前の就労状況などを具体的に検討した上で労働能力喪失率を認定している点で、画期的な判断と言えるでしょう。

既存障害が問題となるケースにおいて、今回のケースと同様の主張が認められるかどうかは、交通事故前の職業、稼働状況、収入などを踏まえ、専門的見地から検討する必要がありますので、お困りごとがございましたら、当事務所までご相談下さい。

後遺症慰謝料

後遺症慰謝料についても、既存障害が認められる場合は、前述した労働能力喪失率と同様に、現存障害の後遺障害等級に相当する後遺症慰謝料から既存障害の後遺障害等級に相当する後遺症慰謝料を差し引いて算定する例が多く見られたように思います。

しかし、やはり、前述した労働能力喪失率と同様に、今回のケースで既存障害を考慮して後遺症慰謝料を算定することには疑問があることから、当事務所は、後遺症慰謝料を算定するに当たり、既存障害を考慮すべきでない旨を主張しました。

裁判所は、後遺症慰謝料について、「後遺障害の内容及び程度等その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、後遺障害慰謝料は2800万円とするのが相当である。」とし、「本件事故以前から生じていた軽度精神発達遅滞は、後遺障害等級第9級に該当するような程度のものとは認められない」と判示し、既存障害による減額を否定しました。

裁判所の判断は、これまで多く見られた考え方とは異なり、被害者の本件事故前の状況を踏まえ、既存障害を考慮せずに第1級相当の後遺症慰謝料を認定しており、画期的な判断といえます。

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