脊柱(頸椎・胸椎・腰椎)と脊髄の障害 / 脊柱の障害 の解決事例

108自賠責が因果関係を否定した腰椎椎体間固定術について、裁判所が因果関係を認め第11級後遺障害を認定した事案

脊柱(頸椎・胸椎・腰椎)と脊髄の障害脊柱の障害

後遺障害等級11級7号 :脊柱(頸椎・胸椎・腰椎)と脊髄の障害 / 脊柱の障害 、22歳、男性、会社員

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交通事故状況

被害者が乗用車を運転し直進中、左方道路から進行してきた加害車両に衝突された事故。

ご要望

被害者は、腰痛等について自賠責第14級認定を受けていたところ、事故から約1年5ヶ月後の腰椎椎体間固定術について、自賠責が事故との因果関係を否定し、自賠責紛争処理機構も同様に因果関係を否定したことから、裁判所により事故と腰椎椎体間固定術との間の因果関係を認めてもらい脊柱変形障害として第11級7号後遺障害の認定を希望していました。

受任から解決まで

被害者は、事故後一貫して腰痛等に悩まされ、この腰痛に対する治療として事故から約1年5ヶ月後に腰椎椎体間固定術を受けました。ところが、自賠責、自賠責紛争処理機構及び相手方保険会社はいずれも事故と腰椎椎体間固定術との間の因果関係を否定しました。

当事務所は、被害者から受任後、裁判により事故と腰椎椎体間固定術との間の因果関係を認めてもらい、脊柱変形障害として第11級後遺障害の認定を目指すこととして、訴訟提起しました。

第一審(水戸地方裁判所)は、「原告が受けた腰椎椎体間固定術は、本件事故による原告の傷害の治療としてなされたものであると認められる。したがって、原告には『せき椎固定術が行われたもの』として、本件事故により、後遺障害等級11級相当の後遺障害が生じたものと認められる」として第11級後遺障害を認定しました。

この第一審判決に対して相手方保険会社は控訴しましたが、控訴審(東京高等裁判所)も第一審と同様の判断を示したことから、第一審判決と同様の内容で裁判上の和解が成立し、解決しました。

解決のポイント

事故前には存在しなかった腰痛が事故後一貫して生じていたこと、腰椎椎体間固定術によりその腰痛が軽減したことを示すカルテ等を証拠提出し、また因果関係を認める放射線科医による画像鑑定や整形外科医の意見書を証拠提出する等して因果関係を立証したことにより、裁判所は、自賠責や相手方保険会社が否定した事故と腰椎椎体間固定術との間の因果関係を認定しました。

脊柱変形障害 第11級7号後遺障害

脊柱の変形障害について、自賠法施行令別表第2は、「脊柱に著しい変形を残すもの」は第6級5号に、「脊柱に中程度の変形を残すもの」は第8級相当に、「脊柱に変形障害を残すもの」は第11級7号に認定すると定めています。

本件は、「脊柱に変形障害を残すもの」として第11級7号に該当するかが争点でした。「脊柱に変形障害を残すもの」の要件は、(ア)「せき椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真、CT画像またはMRI画像により確認できるもの」、(イ)「せき椎固定術が行われたもの」、(ウ)「3個以上のせき椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの」のいずれかに該当することです。

本件について、被害者は、腰椎椎体間固定術を受けています。腰椎椎体間固定術は、前記(イ)の「せき椎固定術」のひとつとされます。

しかし、事故を原因とした後遺障害として認められるためには、被害者が、その「せき椎固定術」と事故との間に因果関係が存在すること(事故を原因とした症状に対してせき椎固定術が行われたこと)を証明する必要があります。本件では、自賠責及び相手方保険会社は、被害者が受けた腰椎椎体間固定術は本件事故が原因ではなく、事故前から存在した別の原因によるものと主張して、事故と腰椎椎体間固定術との間の因果関係を争いました。

当事務所は、前記のとおり、訴訟提起して、事故と腰椎椎体間固定術との間の因果関係を立証しました。裁判所は、当事務所の主張を採用し、事故と腰椎椎体間固定術との間の因果関係を認定し、被害者の後遺障害について「後遺障害等級第11級相当の後遺障害が生じたものと認められる。」と判示しました。

なお、本件の第一審判決は、自保ジャーナル1998号に掲載されています。