交通事故発生 / 交通事故解決までの手順のコラム

物損事故と人身事故の違い【コラム】

交通事故発生交通事故解決までの手順

交通事故は、被害の対象によって、人身事故と物損事故の2つに大きく分けられます。

人身事故とは、人の生命・身体を侵害する場合を言います。また、物損事故とは、人の生命・身体ではなく、車両に関する損害を言います。人身事故と物損事故のいずれであっても、民法上の不法行為が成立することに争いはありません。しかし、人身事故と物損事故とでは、いくつか異なる点もあります。

まず、自賠責保険が適用となるか否かに違いがあります。
自動車損害賠償保障法第3条は、「その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる」として、「生命又は身体を害したとき」という限定を付しています。そのため、人身事故は自賠責保険の適用対象となりますが、物損事故は原則として自賠責保険の適用対象とはなりません。

この点、自動車損害賠償保障法第5条は、「自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任保険(以下「責任保険」という。)又は自動車損害賠償責任共済(以下「責任共済」という。)が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない」と規定し、全ての自動車に自動車損害賠償責任保険もしくは自動車損害賠償責任共済に加入することを義務付けています(自動車損害賠償責任共済は、タクシー事業者等により利用されています。以下では、自動車損害賠償責任保険を前提とします。)。

そのため、自賠責保険は、強制保険と呼ばれることもあります。人身事故の場合には、このように、全ての自動車に自賠責保険に加入することが義務付けられていることから、少なくとも、自賠責保険の範囲内においては、最低限度の補償を受けることが可能です。

他方で、物損事故は自賠責保険の対象とはならないため、①加害者が任意保険に加入している場合には、任意保険により補償を受けること、②加害者が任意保険に加入していない場合には、加害者から直接補償を受けること、③被害者の任意保険を利用することなどが考えられます。加害者が任意保険に加入していれば大きな問題はありませんが、加害者が任意保険に加入しておらず、しかも十分な資力すらないという場合には、被害者は適切な補償を受けることが困難となってしまう可能性があります。

また、被害者の任意保険を利用すると、保険料が上がってしまう可能性があり、やはり抜本的な解決策とはなりません。

人身事故の場合には加害者に対して慰謝料を請求することができますが、物損事故の場合には原則として慰謝料を請求することはできません。人身事故の場合の慰謝料は、傷害慰謝料、後遺症慰謝料、死亡慰謝料などに分かれます。また、慰謝料の金額を算出するにあたっては、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判基準という3つの基準があり、自賠責保険より任意保険基準の方が、任意保険基準より裁判基準の方が金額は高くなります。

なお、物損事故の場合に慰謝料が請求できないのは、被侵害利益が財産権であることから、損害も財産的損害に限られると考えられるためです。

そのため、個別具体的な事案ごとの判断とはなりますが、交通事故により、財産的損害だけではなく、財産的損害とは別の権利・利益が侵害されたと判断される場合には、例外的に慰謝料の請求が認められることがあり、例えば、交通事故により大切に育ててきたペットを失った場合などが考えられます。

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