人身事故の被害者に対する損害賠償責任はどう計算するの?【コラム】
自動車やバイクなどと交通事故の被害に遭ってしまった場合、被害者は、加害者に対して、事故による損害を請求することができます。
この点、交通事故の場合に請求できる損害は、財産的損害(積極損害・消極損害)と精神的損害に分けられます。
財産的損害のうち積極損害とは、被害者が事故によって支出を余儀なくされた損害を言います。
また、財産的損害のうち消極損害は、被害者が事故に遭わなければ得ることができたであろうと考えられる利益を失ったことに対する損害を言います。
積極損害には、例えば、治療費や通院交通費のほか、将来必要になる介護費用なども含まれます。
また、消極損害には、例えば、休業損害や逸失利益があてはまります。
このように、積極損害と消極損害が財産的損害であるのに対して、精神的損害(慰謝料)は精神的な苦痛に対する損害です。
慰謝料については、傷害慰謝料、後遺症慰謝料、死亡慰謝料の区別があります。
また、被害者が重篤な後遺障害を残存させたり、死亡した場合には、近親者に慰謝料が認められることもあります。
なお、被害者にも一定の落ち度があった場合、落ち度の分を加害者に請求することはできないため、その分を賠償額から減額することが必要となります。
これを過失相殺と言い、民法第722条に規定が設けられています。
この点、民法第722条における「被害者」とは、被害者本人の過失だけでなく、被害者と身分上ないし生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者を言うと解されています。例えば、最判昭和51年3月25日(民集30巻2号160頁)は、夫が運転する自動車に乗車中の妻について、夫の過失を被害者側の過失として考慮できる旨を判示しています。このように、過失相殺が争点となる事案においては、被害者の過失割合をどう判断するかがとても重要なポイントになります。過失割合は、事故態様に応じて一定程度類型化されています。
しかし、個別具体的な事案に応じて、刑事記録を精査する等して、基本過失割合から修正することができないか検討することも必要となります。
なお、仮に過失割合が争点となったとしても、交通事故証明書上「物件事故」とされている場合には、警察による実況見分調書等の記録を取り付けることはできません。
そのため、交通事故によりケガをした場合には、できるだけ速やかに警察に診断書を提出して「人身事故」扱いとし、実況見分を実施することが必要です。
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