10 過失割合が問題となり,被害者過失5%で示談解決
後遺障害等級併合後遺障害別等級14級 :頸椎捻挫(ムチウチ)・腰椎捻挫 、50代女性、主婦
神経症状
相手方保険会社が過失10%を主張し、最終的に当方過失5%にて解決しました。
保険会社提示額 | - 万円 |
増加額 | - 万円 |
相談内容
自動車運転中の事故。被害車両が信号機の設置されていない交差点を直進進行していたところ、右方から直進進行してきた加害車両が、被害車両の右側面に追突しました。過失割合は、被害者(5%未満)、相手方(95%以上)の事案です。
○○県の地方相談会に来られた被害者の方です。
ご相談に来られた際、被害者の方は既に後遺障害の申請をされておられました。そこで、後遺障害認定の見込や今後の手続きの流れ等についてご説明致しました。
その後、被害者の方から、併合第14級が認定されたとの連絡を受け、正式に受任し、賠償請求に着手しました。
今回のケースは、過失割合が問題でした。
相手方保険会社は、当方の過失が10%であると主張してきました。
賠償交渉
受任後、裁判基準に基づく請求額を確定させて、保険会社に対し賠償請求しました。その後、約1ヵ月程度で保険会社から賠償金額案の回答がありました。
過失割合についての保険会社の提示は、被害者:相手方=10%:90%でした。
保険会社の理由によれば、「物損の過失割合も、被害者:相手方=10%:90%である」というものでした。
今回のケースでは、被害者の方からご依頼を受ける以前に、既に物損については示談がなされており、その際、過失割合は、被害者:相手方=10%:90%とされていたため、保険会社はこれを理由としたようでした。
物損の過失割合が人身の賠償でも適用されるのか
保険会社が主張する「人身と物損とで過失割合は同じにすべき」というのは法律的に正しいのでしょうか。
答えは、「いいえ」です。人身と物損とで過失割合が異なることは全く問題がありません。
しかし、保険会社は、①物損の過失割合が保険会社にとって有利である場合には、今回のケースのように、物損と同じ過失割合を提示してくることが多いです。
他方で、②物損の過失割合が保険会社にとって不利である場合には、人身と物損とで過失割合を同様にすべきでないとして、物損の解決時とは異なる過失割合を主張して、今後支払額を低く抑えようとすることが多いです。
過失割合で揉めた時はどうすれば良いのでしょうか。
過失割合で揉めたとき
当事務所では、物損だけ先行して示談することはせずに、人身と同時に解決することをご提案しています。
このようにすることで、保険会社が「物損と同じ過失割合にすべき」と主張することを避けることができます。
もっとも、車両が全損扱いとはならずに修理される場合、修理業者の方から修理費用を支払ってほしいと催促を受けることもあるので、この場合には修理業者の方の協力も必要となります。
既に物損について不利な過失割合で示談している場合、相手方に著しい過失があった等、基本過失割合を修正する事実を主張する必要があります。
今回のケースでは、保険会社は物損と同じ過失割合を主張したため、当事務所にて刑事記録を取得し、相手方に著しい過失がある等と主張しました。
ここで、注意しなければならないことは、「相手方に著しい過失がある」と抽象的に主張しても、過失割合を修正することは困難なことです。では、どうすれば良いのでしょうか。
著しい過失の主張
著しい過失としてよく挙げられる例の1つとして、前方不注視が挙げられます。
今回のケースでも相手方に前方不注視があったと考えられたため、当方は、「相手方は、被害者の方に衝突して初めて被害車両の存在に気付いており、前方不注視等の著しい過失がある」と主張しました。
刑事記録には、「最初に相手を発見した地点」や「危険を感じた地点」等の項目がありますが、これについて指示説明が一切ない場合、あるいは、「最初に相手を発見した地点」と衝突地点が同じである場合には、相手方は被害車両に衝突するまで被害車両の存在に気付いていないといえるため、これを「著しい過失」として主張することが可能となります。
今回のケースでは、物損の過失割合よりも被害者に有利に過失割合を修正することができ、被害者の方にもご納得を頂くことができました。
相談から解決までの期間
約2ヶ月(任意交渉による解決)
今回のケースでは、物損の過失割合よりも被害者に有利に過失割合を修正することができ、被害者の方にもご納得を頂くことができました。
○○さん、早く症状を改善させて、趣味に励んでくださいね。お大事にしてください。
既に物損で一定の過失が考慮されて示談された場合、人身で物損とは異なる過失割合にて示談することは、決して簡単なことではありません。保険会社もかなり難色を示します。
そのため、過失割合に納得できない場合には、物損について先行して示談をする前に、一度、弁護士にご相談されることが良いと思います。