62 後遺障害第12級6号の主婦について、保険会社提示の示談金343万円から、2.5倍の873万円に増額した事案
後遺障害等級後遺障害別等級12級~13級6号 :上肢(肩、腕、肘、手首、手指)の障害 / 上腕骨骨折 、70代女性、主婦
右肩関節機能障害
後遺障害第12級6号の主婦について、保険会社提示の示談金343万円から、
2.5倍の873万円に増額した事案です。
保険会社提示額 | 343 万円 |
増加額 | 530 万円 |
交通事故状況
自転車に乗り横断歩道上を走行中に、自動車に衝突されました。
ご依頼者のご要望
相手方保険会社提示の示談金が妥当かどうかについて、ご相談を受けました。
受任から解決まで
被害者は、事前認定により、右上腕骨剄部骨折後の右肩関節の機能障害について、その可動域が健側(左肩関節)の可動域角度の3/4以下に制限されていることから、「1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」として自賠責後遺障害第12級6号に認定され、保険会社から示談金の提示を受けていました。
保険会社提示の示談金は、いわゆる保険会社基準の金額のため、弁護士が交渉することで大幅に増額できる場合が多いです。
このため、当事務所は、相手方保険会社に対し、裁判基準により、休業損害、入通院慰謝料、後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料を積算したうえで、保険会社との間で、示談金の増額を目指して交渉しました。
示談交渉により、ほぼ裁判基準満額で解決しました。受任から解決まで約1ヶ月半でした。
示談交渉
相手方保険会社が、当初被害者に対して提示した示談金と、弁護士が交渉して増額した示談金は、次のとおりです。
保険会社示談金 | 弁護士交渉後示談金 | 増加額 | |
---|---|---|---|
休業損害 | 0円 | 131万円 | 131万円 |
入通院慰謝料 | 85万円 | 159万円 | 74万円 |
後遺障害逸失利益 | 108万円 | 293万円 | 185万円 |
後遺障害慰謝料 | 150万円 | 290万円 | 140万円 |
示談金額(以上合計) | 343万円 | 873万円 | 530万円 |
示談金の増額交渉のポイントは次のとおりです。
休業損害:保険会社の示談金では被害者の休業損害は0円でした。
当事務所は、主婦として家事に支障が生じていることを主張して、主婦の休業損害として131万円が認められました。
後遺障害逸失利益:保険会社の示談金では、後遺障害逸失利益の労働能力喪失期間は3年でした。
しかし、後遺障害第12級6号の労働能力喪失期間は、弁護士が交渉することで、①67歳まで、あるいは②平均余命の1/2の期間のいずれか長い方が認められます。
当事務所は、被害者の労働能力喪失期間は、3年間に制限されるものではなく、②平均余命の1/2の期間である9年間認められるべきと主張して交渉しました。
その結果、労働能力喪失期間を9年として、逸失利益293万円が認められました。
通院慰謝料及び後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料)については、次に詳しく説明します。
通院慰謝料と後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料)
本件では、慰謝料の金額が大きな争点でした。慰謝料について、保険会社基準と裁判基準の二つがあり、一般に、保険会社基準とは、保険会社が被害者に対して示談金を提示するときの基準です。他方で裁判基準とは、裁判所が慰謝料を認定する場合の基準ですが、保健会社は弁護士に対しては、裁判を行わなくても裁判基準(あるいはこれに近い金額)の慰謝料を提示します。
例えば、第12級後遺障害慰謝料について、保険会社基準では150万円、裁判基準では290万円です。本件の被害者は、当初保険会社から第12級後遺障害慰謝料として150万円の提示を受けていましたが、弁護士が交渉し、裁判基準の290万円へ増額し示談しました。
また、入院慰謝料、通院慰謝料についても、保険会社基準と裁判基準が存在します。
本件の被害者は、入通院慰謝料について、当初保険会社基準の85万円の提示を受けていましたが、弁護士が交渉し、ほぼ裁判基準の159万円へ増額し示談しました。
示談金の中で慰謝料が大きな割合を占めます。被害者の方から「慰謝料の相場は?」といったご質問を受けることがありますが、相場というより、むしろ保険会社基準あるいは裁判基準といった用語でご説明するほうが、交通事故損害賠償の実情を正しくご説明できます。
慰謝料について、保険会社は、裁判基準より低い保険会社基準で提示する傾向があります。そして、保険会社は、被害者に対しては裁判基準の慰謝料を提示しませんが、弁護士に対しては裁判を行わなくても裁判基準(あるいはこれに近い金額)の慰謝料を提示するのです。
つまり、保険会社は、被害者に弁護士が付いているかどうかによって、二つの基準を使い分けています。
このため、弁護士が交渉することで、裁判を行わなくても、裁判基準(あるいはこれに近い金額)まで慰謝料を増額でき、その結果、示談金を大幅に増額できる場合が多いのです。
特に後遺障害が認定された場合の後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料)については、保険会社基準と裁判基準の金額の差が大きいため、弁護士が交渉するメリットが大きいといえます。