遅延損害金について【コラム】
現代社会においては、残念ながら、日常的に自動車事故が発生しており、誰もが被害者となってしまう可能性があります。
交通事故の被害を受けた場合には、加害者に対して、民法709条又は自動車損害賠償保障法3条に基づいて、損害賠償請求をすることが通例です。
また、ケースによっては、加害車両を運転していた運転者以外の者に対して、自動車損害賠償保障法3条に基づいて、運行供用者責任を追及することもあります。
さて、不法行為に基づく損害賠償債務は、損害の発生と同時に、催告を要することなく遅滞に陥るものと解されています。
そのため、不法行為に基づいて損害賠償請求をする場合には、不法行為の時、すなわち、交通事故が発生した日から年5%の割合で遅延損害金を請求できます。
自動車損害賠償保障法3条に基づいて損害賠償を請求する場合も、同様に解されています。
しかし、いかなる事案でも遅延損害金が請求できるかというと、そうではありません。
交通事故が発生した場合の紛争解決手段としては、①任意交渉、②ADR、③訴訟があります。
このうち、①任意交渉と②ADRは、遅延損害金を請求することはできません。
そのため、遅延損害金を請求するには、③訴訟を提起する必要があります。
しかし、③訴訟は、遅延損害金を請求できるメリットがある代わりに、①任意交渉と②ADRと比較して解決まで長期間を要すること(半年~2年程度)、また、本人尋問を行う場合には裁判所に出頭する必要があるなどのデメリットがあります。
このように、訴訟を提起するに当たっては、メリットとデメリットがあるため、個別具体的な事案に応じて、訴訟を提起することが適切かどうかを見極める必要があります。
なお、遅延損害金については、例えば、被害者請求により自賠責保険金を受領した場合等において、遅延損害金や元本にどのように充当するかが問題となります。
この点、従前は、「弁護士費用を除く賠償総額から自賠責保険金等を控除し、これに弁護士費用を加算した額を請求元本とし、遅延損害金の起算日を事故日とする方法」が一般的に採用されていました(赤い本413頁)。
しかし、現在では、自賠責保険金等を遅延損害金に充当することが認められているため、従前の方法で訴訟を提起した場合には、過少請求となってしまう可能性がありますので、注意が必要です。
もし、遅延損害金の充当方法にご不明な点がある方がおられましたら、弁護士にご相談下さい。
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