事故後の損害賠償責任とそれに関わる額【コラム】
損害賠償とは、不法行為によって損害を与えた人が損害を受けた人に対して金銭(損害賠償額)を支払うことです。
このとき、損害を発生させた加害者に対して課せられる責任のことを損害賠償責任といいます。
交通事故を発生させた加害者は、この損害賠償責任を負うことになります。
ただし、多くのドライバーは任意保険に入っているため、交通事故を発生させたことによる損害賠償責任について、任意保険の対人賠償保険を利用できます。
被害者のお怪我等の人身損害に対しては対人賠償保険が、車両等の物件損害に対しては対物賠償保険が適用されます。
損害賠償責任により支払うべき額は、訴訟外の示談交渉の場合には両当事者の合意により決定されます。
また、訴訟を提起して判決に至る場合には裁判官が決定します。
このとき、加害者側が被害者に対し支払う損害賠償額に過失相殺が適用される場合があります。
例えば、自動車同士の交通事故において、追突事故のように加害者側に100%の責任がある場合もあれば、信号機のない交差点における出会い頭の事故のように被害者側にも一定の過失がある場合もあります。
このような場合、加害者が被害者に対して支払うべき損害賠償金が過失割合に応じて減額される場合があります。
これを過失相殺といいます。
人身損害と物件損害の両方が生じている場合に、相手方保険会社は、物件損害の示談を先行して提案するとき、過失割合について本来の過失割合より被害者側の過失割合を高く評価して提示することがありますので、このときに簡単に応じようとはせず、適切は過失相殺を適用した本来の損害賠償額を請求することが重要です。
損害賠償責任に関して、人身事故による治療費等については保険会社に全額請求できる場合が多いです。
また、治療費については医療機関から発行される診断書や診療報酬明細書に基づき、保険会社が医療機関に対して直接支払う場合が多いため、物件損害と比較して提出が必要な資料が少なく煩雑な手続は不要な場合が多いです。
タクシー代をはじめとする交通費についても、領収書を保管していれば、保険会社に対し領収書の原本を提出することで、請求することができます。
通院に使用した自家用車のガソリン代についても、1キロメートルあたり15円請求できることがほとんどです。
近年の対人賠償保険では、1事故において支払われる賠償金について無制限に設定していることが多いため、この場合には限度額の超過を心配する必要はありません。
ただし、医師により症状固定であると診断された場合には、通常、症状固定日以降の治療費については、保険会社から支払いを受けることができなくなります。
また、主治医が症状固定と診断する前であっても、保険会社の判断で、治療費の支払いを停止するこがあります。
これを一般に治療費の打ち切りといいます。
被害者としては、治療費の打ち切り後であっても、健康保険を利用して治療を継続するこができます。
その後、症状固定と診断され、自賠責の後遺障害が認定された場合には、被害者が健康保険を利用して支払った症状固定日までの治療費については、事後的に保険会社から支払を受けられる場合が多いです。
他方で、自賠責の後遺障害認定を得られなかった場合には、健康保険を利用した治療費について、保険会社から支払を受けることが困難なため、最終的に被害者負担となります。
損害賠償額のうち、休業損害について説明します。
これは治療費など現実に支出した損害(積極損害)ではありませんが、交通事故による怪我の治療などにより、やむを得ず働けなかった場合、その休業により生じた損害のことです。
休業損害については、勤務形態(会社員か自営業者か)や職業によって計算方法は大きく異なります。交通事故を原因として後遺障害が残った場合には、逸失利益及び後遺障害慰謝料を請求することができます。
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