症状固定 / 自賠責と任意保険の関係のコラム

自賠責保険の特徴【コラム】

症状固定自賠責と任意保険の関係

自賠責保険とは、正式名称を「自動車損害賠償責任保険」といいます。

自動車損害賠償保障法5条は、「自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任保険(以下「責任保険」という。)又は自動車損害賠償責任共済(以下「責任共済」という。)の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない。」と規定しており(適用除外車を除きます。)、これに違反した場合には、同86条の3により、罰則が適用されることとなっています。

さて、自賠責保険には、以下のような特徴があります。

まず、自動車損害賠償保障法16条1項は、「第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。」と規定しています。

これにより、被害者は、加害者を介さずに、自賠責保険に対して請求することができます。これは、被害者は自賠責保険の契約当事者ではありませんが、被害者保護を実現するため、自動車損害賠償保障法により認められた権利です。もっとも、自賠責保険は、あくまで最低限の損害賠償金を支払う保険のため、傷害による損害は120万円、後遺障害による損害は等級に応じて75万円~4000万円、死亡による損害は3000万円と、支払限度額が定められています。

次に、自動車損害賠償保障法3条本文は、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。」と、「生命又は身体を害したときは」と規定しているため、物損事故には適用されません。

また、例えば、訴訟においては、被害者にも一定の落ち度がある場合には、民法722条2項により、過失相殺がなされます。

しかし、自賠責保険においては、被害者保護の理念により、被害者に重大な過失が認められる場合に限り、自賠責保険金から一定の減額を行うこととされており、これを「重過失減額」と言います。

重過失減額の対象となるのは、傷害に係る場合、また、後遺障害・死亡に係る場合のいずれにおいても、被害者に70%以上の過失が認められる場合です。また、減額の割合も、後遺障害・死亡に係る場合において、最大で50%とされており、民法722条2項の過失相殺と比較して、被害者に有利な取扱いがなされています。

さらに、自動車損害賠償保障法17条1項は、「保有者が、責任保険の契約に係る自動車の運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、政令で定める金額を第十六条第一項の規定による損害賠償額の支払のための仮渡金として支払うべきことを請求することができる。」と規定しています。

これにより、被害者は、当面の費用が必要になった場合には、仮渡金の支払いを請求することができます。仮渡金の金額は、死亡の場合には290万円、傷害の場合には程度に応じて最高40万円と定められています。 そして、訴訟においては、既往症等がある場合には、民法722条2項を類推適用して、50%を超える素因減額がなされることがあります。

しかし、自賠責保険においては、被害者が既往症等を有していたため、受傷と死亡又は後遺障害との間の因果関係の有無の判断が困難な場合でも、積算された損害額又は保険金額のいずれか小さい方から50%減額すると取扱われています。

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