損益相殺とは【コラム】
交通事故による被害を受けた場合、被害者は、加害者に対して、損害賠償請求権を取得します。
しかし、被害者が事故を原因として利益を取得した場合、当該利益と事故による損害との間に同質性が認められるときは、当該利益を損害額から控除する必要があります。これを損益相殺と言います。
損益相殺は、民法で規定されているものではありませんが、公平の見地等から認められるものと考えられています。損益相殺については、控除される給付の種類、控除される項目、控除する場合の時的限界、控除の順番など、難しい問題がいくつも含まれています。
例えば、交通事故により被害者が死亡した場合、逸失利益を算出するにあたっては、生きていれば必要となる生活費の支出を免れたことから、被害者本人の死亡後の生活費を控除する必要がありますが、これも損益相殺の考え方に基づくものです。この場合には、個別具体的な事案ごとに生活費の金額を細かく認定することは通常困難であることから、実務上、一定の基準が設けられています。
では、幼児が交通事故により死亡した場合の養育費はどう扱われるのでしょうか。
前述したことを前提とすると、幼児が死亡したことにより幼児の父母等は養育費を支出することが不要となったわけですから、その分を逸失利益から控除する必要があるのではないかとも考えられます。
しかし、最判昭和39年6月24日は、養育費について、被害者が将来得ることができたはずの利益との間に同質性がないとして、被害者から相続した損害賠償請求権から控除する必要はないとの判断を示しました。
このように、損益相殺は、難しい問題をいくつも含むものです。特に、給付された金額次第では、加害者から受ける賠償金額も大きく変わってきますので、慎重な検討が必要となります。
もし、損益相殺の処理がよく分からないという方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度、当事務所までご相談ください。
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