56 保険会社の当初提示額約140万円から最終受領額約230万円に増額した事案
後遺障害等級併合後遺障害別等級14級 :頸椎捻挫(ムチウチ)・腰椎捻挫 、50代女性、兼業主婦
神経症状
保険会社の当初提示額約140万円から最終受領額約230万円に増額した事案です。
保険会社提示額 | - 万円 |
増加額 | - 万円 |
交通事故状況
信号機が設置されておらず、加害者の側に一時停止規制のある交差点を直進進行中、左方より直進進行してきた加害車両に衝突されました(基本過失割合は、被害者:加害者=20%:80%です。)。
被害者の方は、事故により、頚椎捻挫、腰椎捻挫等の傷害を負いました。
ご依頼者のご要望
被害者の方は、第14級9号の後遺障害が認定されており、適切な賠償額を受領したいとのご希望を有しておられました。
受任から解決まで
受任後、裁判基準にて賠償額を積算して保険会社と賠償交渉を開始しました。
しかし、休業損害、逸失利益及び過失割合について主張に隔たりがあったことから、交通事故紛争処理センターへと申立てをして解決しました。
示談交渉
保険会社は、当事務所が受任する前において、主治医に対して、医療照会を実施しており、その中で、被害者に生じていた症状に関して、頚椎の経年性変化の影響があるかどうか照会していました。
これに対して、主治医は、「5分5分」と回答していたところ、保険会社は、これを「事故による影響があるかどうかは不明である」と解釈し、被害者の方に生じていた症状は経年性のものであると主張しました。
そのため、保険会社は、休業損害の休業期間を1ヵ月、労働能力喪失期間を3年、被害者の過失割合20%とし、損害を低く認定する旨を主張しました。
任意交渉では、双方の主張の隔たりが大きかったため、当事務所は、交通事故紛争処理センターへ申立てをしました。
そして、当事務所は、保険会社が実施した医師面談に立会い、主治医に対して、保険会社の主張の根拠である「5分5分」の意味を確認しました。
主治医は、「経年性の影響があるかどうかは分からない」という意味で「5分5分」と回答した旨を説明し、保険会社の主張が主治医の説明と異なることが明らかとなりました。
そこで、交通事故紛争処理センターの手続において、主治医の説明、陳述書及び刑事記録を証拠として提出し、休業損害、労働能力喪失期間及び過失割合を争いました。
斡旋案は、労働能力喪失期間を5年と認定したものの、休業損害の休業期間を約1ヵ月、被害者の過失割合20%と認定し、今後支払額約160万円とする内容でした。
しかし、斡旋案の認定は、被害者の方が被った損害を適切に認定したとは言えません。
そこで、当事務所では、斡旋案を受諾せず、審査会に審査を申立てました。その結果、審査会は、労働能力喪失期間を5年と認定したことはもちろんのこと、休業損害の休業損害を約2ヵ月、被害者の過失割合10%と認定し、保険会社の主張は採用しませんでした。
最終的に、保険会社の当初提示額約140万円から、最終受領額約230万円に増額し解決しました。
また、被害者の過失割合を基本過失割合である20%よりも、被害者の方に有利に修正することができました。
受任前提示金額、解決金額
受任前提示なし、最終受領額約230万円
過失相殺
過失相殺とは、事故の発生に関して被害者側にも一定の落ち度が認められる場合において、その程度に応じて損害賠償額から控除することを言います。
実務では、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」の各類型を基本として、個別具体的な事案に応じて修正要素の有無等を検討して相当な過失割合が認定されています。
今回のケースは、信号機が設置されておらず、加害者の側に一時停止規制のある交差点において発生した事故であるため、前記の基準からすると、被害者の基本過失割合は20%でした。
このように、被害者にも一定の過失が認められると想定される場合には、刑事記録を精査し、被害者の過失割合を基本過失割合よりも有利に修正することができないかを検討する必要があります。
この点、今回のケースでは、刑事記録によれば、加害者は、衝突するまで被害車両の存在に気付いていないことが認められました。
そこで、このような不注意は加害者の著しい過失に該当するとして、被害者の過失割合を減算修正すべきと主張をしました。
交通事故紛争処理センターは、当方の主張を踏まえ、被害者の過失割合を基本過失割合よりも有利に修正し、10%と認定しました。
過失相殺が問題となる場合には、刑事記録を精査して修正要素の有無等を検討する必要がありますので、一度、弁護士にご相談されることが良いと思います。
なお、物損事故扱いの場合には刑事記録が作成されないため、事故により怪我を負った場合には、診断書を警察に提出して人身事故扱いとするようにしましょう。
弁護士が医師面談に立ち会うことで、保険会社の主張が妥当でないことを明らかにしたため、休業損害及び労働能力喪失期間について、審査会で適切な認定を受けることができました。
また、被害者の過失割合を基本過失割合である20%よりも、被害者の方に有利に修正することができました。